桃のデザートコース(202108@パークハイアット京都×Kominasemako)

先日、パークハイアット京都で開催されたシグネチャーダイニングプログラム「Kominasemakoさんの桃のデザートコース」さんをいただいてきました。

モダニスアンドカンパニーさんが手がけるシグネチャーダイニングプログラムを、今回はパークハイアット京都さんとの共同企画で、Kominasemakoさんのデザートコースを提供するというもの。自分の面識のある方の中でもイベントを知っている方と知らない方が半々くらいで誰か行かれているかな?って思っていましたが、誰も行かれていないようでしたので、今回行ってきました。

今回は桃のデザートコースで7品構成でノンアルコールのペアリング付き。テーマは口中調味(こうちゅうちょうみ)という口の中で味を調えるというもの。
桃はNALLABOさんの無農薬桃。使用される器も工芸作品のものが中心で、Kominasemakoさんのお店で使われているものや、新里明士さんの今回のイベント用に作られた光器などもありました。

□桃の風味のお茶

イベント開始前に、全室で提供された桃の風味のお茶。すももにも近い感じの味や香りの入った感じかな。果実が凄いシャリっとした氷みたいにして、味を薄めないような形。

■桃のキャラメリゼ
□香りを育むシャーレ

1品目はペアリングではなく、香りを育むシャーレが提供される。桃の葉がシャーレに入っていて、実際に香りをはぐくむ感じに。葉の細胞を壊すことで青々しさから桃の甘い香りに変わっていくことを時間が経つことで変わる様子を会の中で感じていくものに。

デザートは桃のキャラメリゼ。
桃は皮と実の間がおいしい部分になるので、皮ごとキャラメリゼして食感や香り、皮の色が変わるところを見つつ、平面でカットした桃を球体の氷に載せて提供。球と面の接点は点になるため、温かい桃がその1点を食べることで冷たい印象に変わるところを感じるという、五感を集中して桃と向き合うもの。
カリッとした感じに桃の甘さと香りが口の中にも広がる。そこに、1点冷たい部分で頭の中での印象がちゃんと変わっていく。この後からも五感を使うための準備運動のような形の入りかな。

■バラ科のフルーツのカルパッチョ
□国産ライチのドリンク
デザートはバラ科のフルーツのカルパッチョ。
山梨県産のすもも(ソルダム)、オレゴン産のアメリカンチェリー、ラズベリーをカルパッチョにし、香りを増すためにカンボジア産の非加熱のはちみつ(クメールラビットハニー)をかけて、最後にバラの花を載せて。盛り付けられたお皿を先にサーブされた器に載せると、光が当たりすももの細胞を見ながら食べる形に。

ペアリングは国産ライチのドリンク。
すももとライチの香りは同じくらいの場所にあるので、それぞれのハーモニーが楽しめる形に。すべての食材はバラ科のもので合わせている。

カルパッチョ側で香りなどを楽しみつつ、ライチのドリンクの味が詰まった感じがすごく良い感じに。ここでは視覚で桃を感じながら香りを楽しむ。

■桃のステーキ
□クロモジ茶
デザートは桃のステーキ。
桃の水分量に注目してオーブンで2時間ほど脱水させて旨味や甘みを濃縮したもので、砂糖などは一切使っていない。
完全に乾燥や焼いてしまうわけではなく、ちょうどいい塩梅になるくらいに水分量を残しているので、果肉感もありとても濃縮された味が堪能できる。

ペアリングはクロモジのお茶。一緒にクロモジの枝も提供されて、実際に折って香りも楽しむ。
デザートを切るカトラリーもクロモジで作られたものなので、ドリンクだけではないペアリングもここでは楽しめる形に。

最初に提供されたシャーレの香りがこのタイミングで酸を少し帯びてくるので、そこでも香りも合わせていく形。青っぽい香りから少し甘さがついてきている。

■桃のステーキ2
□大豆コーヒー
デザートは3品目の時よりも更に水分量を少なくした桃に、今度はすももの酸味を入れて、シュトロイゼル、白ゴマのクリームの上に載せたもの。

ペアリングは8時間かけて水出しで抽出して温めなおした大豆コーヒー。

桃は先ほどよりかは少しドライ気味になるが、そこに白ごまを合わせることで少し香ばしい感じと酸味がより強調され、大豆コーヒーとも合わせることで一体感が生まれてくる。
桃のタルトを全体で生成しているような感じにも思える一品。

■シブーストクリームを使った桃のデザート
□ピスタチオミルク
デザートはシブーストクリームを使った桃のデザート。
サワークリームと卵白とメレンゲを合わせた冷製のシブーストクリームを作成。桃と無花果とイタリア産のヘーゼルナッツにシブーストクリームを載せてバーナーでキャラメリゼ。さらに桃の皮を使ったグラニテをかけて。

ペアリングはシチリア産のピスタチオを使ったピスタチオミルク。アーモンドミルクの要領で作成。香りを立たせるためにほんの少しだけ砂糖を入れて。

ピスタチオと相性の良い食材のデザートになっていて、フレッシュなヘーゼルナッツと桃の組み合わせもよく、爽やかなナッティさがある。そこに、ピスタチオミルクで風味などを補完して食べていく形に。

■西京味噌と桃
□黒ゴマ茶
デザートは塩味をテーマとして西京味噌を使ったもの。
クリームチーズの西京味噌漬けに桃を合わせて巻いたものに、松の実とベビーリーフと塩とオリーブオイルでいただく。水分量は塩分濃度を利用して桃から水分を引っ張ることで少しあっさりした感じに調整をしている。

ペアリングは黒ゴマを焙煎したお茶。うまみ成分がある油分が必要なのと化学反応を抑えるために金のフィルターで落としていく。
焙煎茶の香りがとても良い香りがしてきて、うまみも深みもしっかり入ったお茶となっている。

この組み合わせは結構意外な印象があったのですが、甘さと塩味のバランスもよく重すぎないし、いろいろな味の成分がしっかりとまとまって口の中に入るのが面白い。そこに黒ゴマのペアリングで、香りや香ばしさをプラスさせて、美味しさを助長させる。

器は新国立美術館で展示されていた陰影礼賛をモチーフにした器で、デザートの器も同じモチーフのものを今回の会に合わせて作られている。

■桃のスープ
□枇杷ミルク
デザートは桃のスープ。
桃を手動ですりつぶし皮も凍らせたものを粉砕して混ぜることで、桃の繊維を大事にした形に。最後にすもも(貴陽)を凍らせてバラの花びらのようにかけていただく。

ペアリングは枇杷の種を使ってアーモンドミルクの要領で作った枇杷ミルク。枇杷の香りと桃の種の香りをイメージして楽しむものに。

少し酸を入れつつ桃の繊維や甘さを感じながらいただき、枇杷ミルクをいただくことで桃を種ごと丸ごといただいたような感じに。最後にもう一度、シンプルに桃を感じ取れるようなものでのしめくくりでした。

今回はシェフの気合が一層感じられ、桃と真摯に向き合う様がよく伝わったかなと思います。もっと色々質問すればよかったかなとか思ったり。

会については、実は自分の中でもどうだったかは中々まとまらないんですが、行かれる人の目的で結構変わるのかなとは思っています。

シグネチャーダイニングということで、ディナー形式での食事や伝統文化を感じながらいただくような、カルチャーを学ぶようなのを目的で来られている場合は概ね相応かなと。
デザートを主としている人としては、お店のコースのことも理解しているのでデザート以外の面では(55,000円という金額を考えると)ちょっと物足りない部分もあるのかなとは思いました。
キッチンのあるプライベートダイニングでの貸し切り営業でしたが、八坂の塔が見えるシグネチャーダイニングだと結構特別感があるかなとか(演出上暗くする必要があるので難しかったかもですが)、少し着眼点が変わってくるのでこのあたりの層をマッチングさせていくにはもうワンポイントあってもいいのかなと。

写真が撮れるかどうかについても賛否ありそうですが、レストラン等では撮影NGのお店もあるのと器などの著作の兼ね合いもありそうで、そういった面では仕方はないかなという部分もあると思います。(周囲のお客様の迷惑にならなければパークハイアット京都はOKなようですが。)

色々な面で自分の中での指標などが再構成されたり、参加・体験しないとわからない部分というのは絶対あるので、そういった面では収穫としては大きかったかなと思います。

https://kominasemako.com/